2008.12.26 Friday
初めての親業1年めでした
気がつけば、あっという間に年の瀬がせまっています。みなさん、この1年はどういう年でしたでしょうか。
来週は更新をお休みさせていただくので、今回が今年最後になります。
私自身が驚いているのは、昨年11月に出産し、はじめての親業を経験し、仕事と育児を両方やることになってまだたったの1年ちょっとだということ。なんだか、もっと時間がたっているような気がするのも、ひとつひとつ新しい経験だったからなんでしょうね。
今年はこのDomani webのコラムを書く機会をいただいたこともあり、妊娠、出産、子育てにまつわるトピックスにはとても敏感になりましたし、ママ同士という新しい出会いもたくさんあって情報も入ってくるようになりました。
いましみじみ思うのは、その妊娠から子育てというのは、本当に、やってみてはじめて何が本当に大変か実感できるものであるということ。こればかりは、人の話をいくら聞いても自分が当事者にならないとなかなか実感できないものだったのです。そして当事者になったとたん、「わー、こういうことだったのか」のオンパレードなのです。
人によっていろいろだと思いますが、私の場合、乳腺炎がこんなに辛いなんて聞いてない! とか(笑)、予防接種のスケジューリングで子どもの体調と自分の仕事とのやりくりで何通りものプランをたてるワザとか。ひとつひとつは細かいことなんですが、なにしろ知らなかったことばかりなので、いちいち調べながらです。
これだけの「本当に大変なこと」をもっと前もって体系的に学んで、ライフプランに組み込めるよう準備しておくべきなんだろうなあということも実感しました。
恐ろしいのは、女性である私でも当事者にならないとわからないことだらけなのに、ましてや男性となると……日本は、政治も行政も経営も、意志決定者は50代以上の男性が圧倒的です。家事も育児も当事者として参加している人はとんでもなく少ないはず。
この人たちがすぐに変わるとは思えないですよね。
だから、自分たちが変わるしかない。ではどうやって。
知らなかったことを常識にしていく。そのためには私たち自身がもっと知恵を出しあい、共有しなければ。最終的には、教育の中身にもこのテーマが必要なんだと思います。
媒体はその「知恵」を媒介するために存在する。そんなことを改めてまた強く感じた年の瀬でした。
ではみなさん、よいお年を。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
2008.12.16 Tuesday
受診が必要な子どもと小児科医、双方を守るには
最近の親は、夜間の救急医療をコンビニ化しているという批判がありますよね。このコラムの担当編集者、Sさんも夜中にお子さんが激しい腹痛で夜間救急を受診したところ、「ガーゼを取り替えに来たのー」と顔見知りのお母さんと子どもが来てたのにびっくりしたという経験があるそうです。仕事があるから、心配だから、ひどいときは昼間より混雑が少ないからというトンデモ理由で受診する親もいる……。
でも、普通の感覚でいけば、夜間具合が悪くなったら親としては本当に心配ですよね。また、働く母が増えてきたら夕方で終わってしまう病院は行きにくい……(これは母自身の病気でも同じですね)。
開業歯科医などは、土日や夜間の診療をしているところも増えてきました。同じように、小児科や普通の内科や外科などもそういうシフトを組んでくれるといいなあとは確かに思います。
とはいえ、とくに小児科については、あまりにも気軽に夜間診療に出かけてしまって本当に重篤な病気やケガで早急な診療が必要な子どもに影響があったり、医師が疲弊してしまっては本末転倒です。
これについては、受ける側の意識がまず大事。たとえば、まずは小児科学会が運営しているサイト「お母さんのための救急&予防サイト」の存在を知っておくだけでも違うと思います。症状別にあてはまる項目をチェックしていくと救急車を呼ぶべきか、夜間診療に行くべきか、のアドバイスが出てきて、なんとも心強い。
また、地域のお母さんたちが連携して、疲弊し減っていく小児科医を守るために立ち上がった例もあります。県立柏原病院の小児科を守る会では、啓蒙活動の結果、小児科の救急受診が半減し、この取り組みに心を動かされた大学病院の医師が転勤を希望するなどの効果があったそうです。サイトも立ち上げて熱心に講習会や勉強会活動に取り組んでいるのは市立西脇病院小児科を守る会です。
見逃してはならないのは、病院側ができることもあるということ。世田谷区にあるいわゆる「子ども病院」の性格をもつ国立成育医療センターの救急センターでは、症状の重い軽いに関わらず痛みや不安を持つ子どもと家族のためにいつでもどうぞ、という姿勢を貫いています。
その代わりといってはなんですが、ここではトリアージを行っています。受付順番通りではなく、症状の重篤度をみて緊急性を判断していくのです。その結果、症状が軽いと判断されれば待ち時間が長くなります。この病院では、年間4万人近い患者さんが救急診療を受けるそうですが、そのうち15分以内をメドに診察・治療が必要な緊急性の高い子どもは約1割だそうです。
トリアージは、こういう場面でも使われるのですね。正確に行われれば合理的なシステムだなとまた改めて思いました。
医療は、社会性・公共性の強いサービス業です。利用者が受けやすいものにしていく必要もありますし、そしてそのサービスを利用する我々も知識をしっかりもって節度ある使い方をしてこそ、地域医療が充実していくのでしょう。
このどちらもがあってはじめて成熟した社会、と呼べるような気がします。
2008.12.10 Wednesday
問題は産む側にもある?
前回、新生児医療に携わる医師も少ないのだ、という話を書きました。
産婦人科医と同様、勤務がきつくてリスクも多く、なり手が少ないということです。
その一方でNICU(新生児集中治療室)が必要な赤ちゃんが、この10年で1.5倍に増えています。そのデータを裏付けるような記事が今度は産経新聞にありました。
低出生体重児(2,500グラム以下で生まれた赤ちゃん)を出産する割合は、高齢になるほど高くなり、45歳以上が16.2%、40~44歳は13.3%、35~39歳が11.1%というデータが出ていました。
この記事では、高齢出産のみならず、不妊治療の結果としての多胎、ダイエットなどによって母体から胎児への栄養が不足することなども要因として指摘しています。
確かにさかのぼること2006年2月。厚生労働省は、行き過ぎたダイエットなどの影響で低出生体重児が増えたとして、妊産婦に対して食生活を通じた健康支援に取り組んでいました。
そして無視してはならないのが、妊娠中の喫煙や飲酒。これも相関関係がありそうです。
ちなみに、喫煙に関しては女性の喫煙率が9~12%の間を上下動しながらも少しずつ増え続けていることもあり、特に出産適齢期ともいえる20代が17.9%、30代が16.4%となっています。
低出生体重児すべてが母の責任ではもちろんないのですが、無理なダイエットや喫煙、飲酒は、母体としても気をつけられることだったりします。さらに、妊娠したらきちんとかかりつけ医を持つ、妊娠中の健康に気を配るなどの、妊婦側も最低限のモラルをもってほしい、と指摘する医師もいます。
妊婦さんのたらい回しのケースでは、かかりつけ医を持っていない、つまり妊婦検診を受けていなかったために受け入れ先が難色を示した(HIV感染の有無や既往症などが把握できないため)という例もありました。
産婦人科医、小児科医を守って本当に必要なときに必要な医療が受けられるようにする……。これは、各医師のがんばり、病院経営、行政といった視点だけではたちいかず、利用する私たちも、しっかり知識をもっていかなくてはということになりますよね。
もう一つ、産婦人科、小児科の医師たちを疲弊させているのが、夜間の緊急診療時間帯のコンビニ受診。特に小さい子どもの急病や事故は心配ですので、ちょっとしたことでも夜中に駆け込みたくなるのも人情というもの。これについては、市民側、病院側の取り組みがありました。それは次回に。
2008.12.04 Thursday
産婦人科医だけじゃなかった
お腹の中から出てしまっても、生存できるギリギリのラインが妊娠22週と言われている……妊娠中にこれを聞いた私は、高齢ということもありとにかく22週まで頑張ろう、と祈るような気持ちでした。
しかし、このときは本当に知りませんでした。早産になってもNICUに入れない可能性があるということを。先日のニュースが伝えていたのは、妊娠27週で自宅で生まれてきてしまった未熟児の赤ちゃんが、7病院に受け入れを拒否され亡くなってしまったというものでした。
先日、産婦人科医はもっとも過酷な職業、と書きましたが、「新生児ICUパンク」というYOMIURI ONLINEの記事を読んで、新生児科の医師も本当に足りないのだということに愕然としました。
いま、年間でNICUでの治療が必要な赤ちゃんは、3万6,000人。高齢出産や医療技術の進歩などの理由で、この10年で1.5倍にも増えたそうです。この赤ちゃんたちを救うには、少なくとも3,000床のNICUが必要で、いまの実際数が2,000床。この数字だけを見れば、必要数の3分の2しか設備がない、ということになります。そしてこのNICUで実際に診療にあたる新生児科の医師の数は、いま現在の日本では700~800人。あと1,000床を増床するには、医師の数を1.5倍から2倍にする必要があるのだそうです。
しかし、産婦人科医と同じように激務で訴訟リスクも高いこの分野は、やはり敬遠されがちで、なかなか志望者が増えないのが現状のようです。
志の高い医師たちが、その志だけで過重労働を厭わず、妊婦や未熟児を救うために働きづめに働いている。3Kともいわれかねないこの仕事を、どのように働きやすくして、なり手を増やすのか。勤務体制などの職場環境改善、労働や責任に見合う十分な報酬、訴訟などに対するリスクヘッジ、などを平行して行っていかないと、産婦人科医同様、確保は難しいでしょう。
重篤な病に陥った妊婦さんや早産の赤ちゃんが病院から受け入れを拒否されて亡くなってしまうというようなニュースが、もし今後増えるようなことがあれば、女性たちが不安から出産を先送りしたり、断念しようと考えても不思議ではありません。
少子化の理由は、こうやって本当にさまざまな局面に点在しているものだという認識をまた強くしました。その点在している問題をひとつひとつ、つなげて解決していかないといけないのですね。
Profile
矢野貴久子
出版社、フリー編集者を経て'99年にネットメディア、カフェグローブ・ドット・コムを設立。多忙な30代を経て40代で不妊治療を開始し、'07年11月に45歳で男児出産。'08年2月に職場復帰したばかりの新米ワーキングマザー。その日常は自身のブログ「朝と夜のあいだに」にても執筆中。
http://www.cafeblo.com/asayoru/
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